さよなら

Twitterで語ると迷惑がられそうなことを綴るブログ

読書感想文

こんばんは、白瀬です。久し振りにブログを更新します。爪が長いのでキーボードが打ちにくいですが、頑張ります。

 

タイトル通り、本を読んだ感想を綴ろうと思います。皆さんは江國香織さんをご存じですか?いつかTwitterのタイムラインでちらっと見た、江國香織さんの作品の一文に惹かれ、翌日すぐに本を買いました。

 

つめたいよるに (新潮文庫)

つめたいよるに (新潮文庫)

 

 

20年前に発売された、『つめたいよるに』という短編集の最初の小説、『デューク』の一文、「デュークが死んだ」。たったこの8文字に何故か惹かれたのです。

 

本当は全文今すぐこの場で読んでほしいくらいですが、さすがにそれはできないので、文章力皆無のわたしが、出来得る限り魅力を伝えます。

 

この作品のタイトルでもあるデュークは、主人公である女の子の飼い犬です。物語は、デュークが死んでしまったところから始まります。

 

主人公の女の子は21歳。彼女は自分でもみっともないとわかっていながらも、デュークが死んでしまったことが悲しくて、涙が止まりません。

 

二十一にもなった女が、びょおびょお泣きながら歩いているのだから、他の人たちがいぶかしげに私を見たのも、無理のないことだった。

 

この「びょおびょお」という擬音語を初めて目にしたはずなのに、何故かわかるのです。大粒の涙は止め処なく流れ、頬を濡らす。その様子が目に浮かびます。

 

わたしはこの感覚を知っているのに、ひどく既視感を覚えるのに、言葉にできない。それを、江國香織さんは言葉にしてくれています。だから、読んでいてとても気持ちがいい。この感覚は、aikoさんの歌詞にも覚えました。aikoさんの歌詞も同じように、こんな気持ちになったことがあるのに、言葉に出来なかったことを、表してくれます。引き出しの多さに感動。aikoさんの話は、また今度記事にします。

 

話は戻って、泣きながらも彼女はアルバイトに行かなくてはならなかったので、電車に乗ります。そこで、ハンサムな男の子に席を譲ってもらうのです。

彼は特に心配の声をかけることもなく、彼女が降りる終点の渋谷まで、満員電車の雑踏からさりげなく守ってくれました。そんな彼に、彼女はお礼をしようと喫茶店へ誘い、コーヒーとオムレツをご馳走します。彼女はその日、アルバイトを休みました。

彼はご馳走のお礼に、彼女をプールに誘います。

 

ゆっくり水に入ると、からだがゆらゆらして見える。

 

とても単純な一文ですが、季節は冬。温水とは言え、プールに入って泳ぐことの躊躇が感じられる一文だなあと思いました。そして、彼女は泳ぐことが出来ないはずなのに、なぜか泳げたのです。

 

プールをでると、私たちはアイスクリームを買って、食べながら歩いた。泳いだあとの疲れもここちよく、アイスクリームのあまさは、舌にうれしかった。 

 

この、「舌にうれしかった」という一文は、誰もがハッとすると思います。舌には感情はありません。でも、どういうことかわかる。多分わたしなら、「うわーおいしい~やば~~」としか思えません。泳ぎ疲れているし、頭も悪いので(笑)

 

その後は美術館に行き、絵画を見たあとに、たまたま通りかかった演芸場を目にし、彼が好きだと言った落語を聴きに行きます。中に入ると、彼女はだんだん憂鬱になっていきます。デュークも、落語が好きだったからです。

 

結局彼女は一度も笑えず、演芸場を出ると、彼は、大通りに流れる歌やネオンにクリスマスを感じ、「今年ももう終わるなぁ」と言います。

 

「来年はまた新しい年だね」

「そうね」

「今までずっと、僕は楽しかったよ」

「そう。わたしもよ」

下を向いたまま私が言うと、少年は私のあごをそっともちあげた。

「今までずっと、だよ」

 

デュークはたまご料理とアイスクリームと落語が好きでした。彼は彼女にキスをして、青信号が点滅している横断歩道に飛び出し、姿を消してしまいます。

 

ゆっくり読んでも10分程度で読めてしまう短編ですが、わたしは今まで、こんなに胸が高鳴る小説を読んだことがありませんでした。母がミステリー小説好きなので、お下がりはミステリーばかり。読む度ドキドキはしていましたが、言わずもがな、違うドキドキです。

これからも、たくさん素敵な作品に出逢うと思います。でも、この『デューク』は、生涯、わたしの胸をときめかせ続けるでしょう。何度も何度も読み返したい、わたしの大好きな小説です。